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12月26日
午前6:50


『弘…隆弘、そろそろ起きて』

心地よい夢の中で、自分の名を呼ばれ、その縁からゆっくり浮上する。

身じろぎをすると、直に触れるいつもと違う毛布の柔らかな質感に、ここが自分の部屋ではないことを思い出した。

閑なる自然光の差し込む室内に、微かな珈琲の香り。

部屋の中は適度な温度に暖まり、何も身に着けていない身で身体を起こしても、なんら寒さは感じなかった。

自分を呼んでいた声の主は、もう既にほとんどの身支度を終えていて、窓から外を眺めている。

『…柚希』
『あ、やっと起きた?おはよう!今日はすっごく天気良いみたいだよ』

朝もやの中で振り向く柚希は、まだ化粧前のようで、年齢の割にあどけなさが残る、俺が一番好きな素顔。

『今、何時?』
『もうすぐ7時かな…さっきネットで確認したら、電車は普通に動いてるみたい。でも、少し早く出た方が良いかもね』