途端にまた心臓が飛び跳ねる。

『俺』

思えば、モニター画像が映らないのだから、もう少し自分だとわかる返答をすれば良いのに、なぜか柚希の声を聞いて更に緊張感が高まり、なんとも冷たく不親切な言い方をしてしまった。

やはりもう一度、名前まで言おうかと声を発しようとすると、突然目の前のドアが大きく開かれた。

驚いた顔で現れた柚希は、たった今風呂から出てきたような姿で、あまりにも警戒心のかけらもなく、無防備だった。

『お前、早く開けすぎだろ』

思わず、怒ったように言い放つ。

”もし俺じゃなかったら、どうするんだ”という警告も含めたものだったが、柚希は『でも隆弘の声だったし…』と、呑気な回答。

たった一言で俺だと気づき、俺だと分かった途端にすぐに警戒を解き、ドアを開けたのだと知って、正直にやけそうになったが、それを悟られないように無理矢理ポーカーフェイスを作った。

『入るぞ』
『あ…うん』

肩に積もっていた雪を軽く払い、少々強引に室内に上がる。