そんな非現実的なことはあり得ない…と思う反面、先ほどの老女の話や、今ここに自分がいることの事実が、すべての答えなのだと思わざる得ない。

”もし、そうならば、俺と柚希は…”

そう思い至ると、ますます想いが強くなる。

高鳴り出す鼓動を抑えて、柚希に電話をかけた。

10回以上コール音を聞くが、柚希が出る気配はない。

この時間なら、確実に起きているはずなのだから、もしかしたら風呂にでも入っているのかもしれない。

仕方なく”今から行く”とだけ、メッセージを入れ、すぐに歩き出した。

相変わらず雪は降り続き、通常に比べて数倍も歩きづらいが、何故か気分は晴れたように清々しく、向かう足取りも軽くなる。

なにげなく胸に手を当て、その内側にある”奇跡の石”に感謝の念を送る。

こんな不可思議な出来事を、案外すんなり受け入れている自分に驚きつつも、単純に、もう間もなく柚希に会えることが嬉しかった。