琥珀の奇蹟-MEN-


緊張感がほどけたせいかのどが渇き、目の前の珈琲に手を伸ばして一口飲んで、顔をしかめる。

『苦ッ』
『ああ悪いね、時間かけた分、濃くなってるだろう?』
『今の自分にはこれぐらい苦い方が良いのかもしれません』
『ハハハ…カッコは良いが、今夜眠れなくなるぞ。今直ぐ淹れなおしてくるよ』
『いえ、マスター、もう出るので、淹れなおさなくていいです』
『?』
『今から、柚希に会いに行ってきます』

マスターは驚き、一瞬時計を見るも、もう一度俺の顔をみて確固とした意志を読み取ると、いつもの柔らかな笑みで『そうか』と一言。

時刻はもう10分もしたら午後11時になろうというのに、俺は無性に柚希に会いたくなり、明日が平日だとか、数日したら年末休みに入るとか、そんなことは関係ないほどの衝動に駆られた。

苦い珈琲を一気に飲み干すと、コートを手に取り、レジに向かう。