暖かな店内は、相変わらず仄暗く、いつも通り時代が遡ったようなノスタルジックな雰囲気が漂っていた。

『おや、いらっしゃい』

カウンターの内側にいたマスターが、すぐに気が付いて、声をかけてくれる。

『こんばんは…まだやってます?』
『そろそろ閉めようかと思っていたんだが…君が来たなら、閉めるわけには行かないな』

冗談めかして言う。

店内の客は、マスターのいるカウンターの前に女性客が一人座っているだけで、他には誰もいないようだ。

『あ~…それなら、また出直して…』
『ハハハ…冗談だよ。雪も積もってきたし、そのうち暖を取る客もいるだろうから、もう少し開けておこうと、思ってたとこだ』
『良いんですか?』
『もちろん』

柔らかな笑顔で『お好きなところにどうぞ』と言われ、空いているといつも座っている窓際のソファ席に、腰を落とした。

マスターが若い頃からコツコツ集めたという骨董品で囲まれた店内は、いつも時が遡ったような不思議な空間が広がり、時間の感覚さえ忘れてしまいそうになる。

店内にはアコースティックギターで奏でるクリスマスソング。

ここでもクリスマスか…と、思わず苦笑いしてしまう。