意外にも、道は空いていて、自社工場までは30分もかからず到着。

工場では、既に佐藤が製品を必要数まとめて準備しておいてくれたおかげで、スムーズに車に積み込み、直ぐに出発できた。

川崎からは時間短縮の為に、首都高横羽線を利用して、夕方謝罪に訪れた取引先の本社がある品川へ向かう。

クレームをかけてきた先方の担当者は、こちらの早い対応と誠意が伝わり、最後には労いの言葉までいただき、感無量の白石と共に、自社ビルに戻ってきたのは、午後9時を20分ほど過ぎた頃だった。

白石が営業車を駐車場に入れている間、自販機で缶コーヒーを2本買う。

出るときに降っていた雪は、いつの間にか大きなボタン雪に変わり、5分も外にいれば薄っすら肩に雪が溜まってしまうほどだ。

『結構降ってきましたねぇ』

車庫から戻ってきた白石に1本投げると、軽く受け取り、『あざっす!』と、今日一番の笑顔を見せる。

『お疲れさん、とりあえず何とか終わったな』
『主任のおかげです、本当にありがとうございました』
『明日の朝、念のために、もう一度謝罪に行くか』
『そうですね』

夕方の悲壮感が嘘のように、晴れ晴れした顔をしていた。

『あ~なんか、ホッとしたら急に、腹減ってきましたよ。主任、なんか食っていきません?』
『そうだな、そうするか』
『駅前の牛丼なんか、どうですか?』
『悪くないな』

クリスマスの夜に、男二人で牛丼を喰らうのも、悪くない…か。