私は性格さえも変えて、彼にアピールしようと思う。
 
名前も知らないけど、
きっとその内「友達」という関係にはなれるだろう。
 
なれなくてもそう願う。
 
 
授業もいつもより手を挙げた。
 
元気よく意見も言った。
 
おかげで先生に、
 
 
「君、今日は元気がいいね」
 
 
と笑顔で言われた。
 
 
嬉しい。
 
気持ちいい。
 
 
でも私の元気な姿を見て、
「ウザイ」と思う奴もいた。
 
 
 
「アンタ、キモイ」
 
 
トイレに呼び出して、私にそう言ったのは
同じクラスの戸山 美恵(とやま みえ)だ。
 
いつも態度が偉そうで、
授業中に携帯ばかりいじって、
勉強もしていない。
 
なぜ退学させられないのか。
私もそれは疑問に思った。
 
少し調べてみると、
美恵は金持ちの娘らしい。
 
だから先生達は親の言いなりになって、
退学させられないんだ。
 
そのお金持ちの美恵が私に言ってくる。
 
 
「アンタさァ、今日調子乗りまくってたけど、
何かあったわけ?マジキモイんだけど」
 
美恵は口に咥えた煙草を二本の指で取り出し、
煙の出ている方を私の頬につけた。
 
 
「熱いッ!」
 
 
思わず声が漏れた。
考えられないほどの熱さがまだ頬に残っている。
美恵はそれ見て嘲笑った。
 
 
「良い気味ね。っま、虐められたくなかったら、
いつも通りに暗い子でいなさいな」
 
 
そう言って、美恵はトイレを出ていった。
私は急いで鏡を見る。
 
煙草の灰がまだ付着していた。
何とも痛々しい。
 
私はその灰を水で洗い流す。
 
綺麗になった頬にあるのは一つの穴。
 
 
 
奥の方まで、肉が焼けてしまっていた。