「俺でよかったら聞きますよ、沙絢さん」 そう言ったところで、弟の友達である俺に彼女が口を開くわけがないだろう。 そう思っていたのに、彼女は思いの外すんなりと口を開いた。 「フラれちゃった」─────と。 「………え?」 その一文字を発するまでに、数秒の時間が必要だった。 意味を理解するのに、更に数秒の時間が必要だった。 「あの人にね、新しく好きな人が出来たんだって」 「………さ、」 「本当、情けないよね」 辛いはずなのに、なんであなたはそんなに穏やかに笑うんだろう。