「今日の実果、何か違うな」

改札を通る人並みを眺めていると、大地が隣で呟いた。

「そう?」

視線を外せなくて、顔を見ずに答える。

「ん……あのさ、オレ」
「あっ」

大地が何かを言いかけたけど、私はそれを遮ってしまった。

「ごめん。……何?」

無理やり視線をはがして、大地の顔を見上げる。

「やっとこっち向いた」

微笑みながら、私の髪を撫で回す大地。

「ちょっ、何すんのよ!」

さっき洗面所で整えてきたばかりなのに……

今日は特別な日だから。

あなたの目に留まるように、少しでも綺麗にしたくて。

「相変わらず、仲良いな」

ふと、大人の声がして振り向くと……あなたがいた。

「親父か。おかえり」

そう、あなたは幼なじみの父親で。

「あの、誕生日おめでとうございます」
「ありがとう。髪クシャクシャだね」

彼の大きな手が私の髪を優しく撫でてくれて……ひどく胸が痛んだ。