「おい、起きろ」

小さく肩を揺さぶられ、まぶたを開く。

「もう完全下校時刻だぞ」
「はっ……うそ、寝ちゃった!?」

慌てて顔を上げると、先生があきれ顔で私を見下ろしていた。

「ひとりで居残ってたのか?」
「はい。私、要領悪いから」

冗談交じりに言ったのに、先生の目が同情のようなまなざしになる。

「捨てられた子犬を見るような目つきで見ないでください」

今度ははっきり冗談とわかるように、笑ってみせる。

「そういう目では見てないよ」

なのに、先生は真面目な顔で見つめ返してきた。

「じゃあ、どういう気持ちで見てるんですか?」

さして期待もしないで、プリントをまとめながら訊いてみる。

「それは……内緒。ほら、帰るぞ」

ふいに頭をポンポンと優しくたたかれ、私は先生を見上げた。

「いつか、教えてくれますか?」
「卒業するまで待てたらな」

先生は、まっすぐに私を見て微笑んだ。