本棚のかげに隠れて、心臓に手をあててみる。
心臓は止まることを忘れてしまったかのように、狂ったように急かされ動く。
どうやら私はさっきの人に一目惚れしてしまったようだ。
私はそこで我にかえった。
私が先程の人に一目惚れしたのは疑いようがない。
それと同時に、まだ会ったこともないあの蜜柑の香りの持ち主にも心惹かれていた。
私は本来、あまり一目惚れをするような人間ではない。
ましてや、香りしか知らないような人を好きになるなんて、今までありえなかった。
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