相変わらず京の町は賑わっており、十六夜はそこら中の店に興味があるようできょろきょろと見回す。
まるで初めて市場を歩く幼子のようで、永倉たちは微笑ましそうに見ていた。
「何か欲しいものがあるなら買ってやるぞ」
永倉がそう言っても十六夜は首を振り、ただ見物しているだけだった。
沖田おすすめの甘味処にやって来ても、何も頼まず茶を飲み、簪や櫛も見ているだけで欲しいとは言わない。
「本当に何もいらないのか?」
「はい。見てるだけでも十分楽しいので」
十六夜はそう言うが、永倉たちは納得がいっておらず、特に藤堂が不満そうな顔をしていた。