しばらくしてふらりと立ち上がる。



集落の門に向かって歩き出す。



和泉のいない集落を、彼を殺すことを良しとした集落を、彼を殺した自分を作った集落を治める当主になることに嫌気が差し、十六夜は集落を出た。



彼女を動かしていたのは、和泉が残した十六夜になら見つけられるかもしれないという言葉だった。



門を出て、そのまま山道を進む。



その間も十六夜が振り返ることは一度もなかった。