「あんたって、いつも〝ミモリ〟のポスター案採用するわね」

「……ミモリって誰?」



最初に惚れたのは彼女の仕事だった。

大手のブランド下着メーカー。

自分はそこのデザイナーで、この会社の売り上げは自分がデザインし作り上げたランジェリーで成り立っていると謙遜もなく言い切れる。

この会社には必要不可欠な存在。

己惚れではなくプライド。

裏を返せば重圧にもなるそれを糧に身を引き締めて仕事に取り組んでいる。

だから仕事にはシビアで手抜きや妥協をする気もないし許す気もない。

自分にも厳しければ他人にも同じ厳しさを躊躇いもなく向ける。

そうしている内に俺の印象は面白い程下降を辿った。

仕事には尊敬出来ても他人としては『最低』だと、そんなレッテルは日増しに増えて、プライベートでもさらりと声をかけてくるのは……このオカマ野郎。

もとい…〝泉 響也(いずみ きょうや)〟だけだろう。

俺とは正反対に人当たりよく、他人からの覚えがいい。

手がける仕事にも勿論手抜きや妥協もなく俺と並ぶこの会社の売上貢献者。

長身、モデル張りの整った美人顔、気さくな性格。

当然女子の色めいた覚えもいいこいつ。

だけどもその本人が並の女子より女子力高い『おネエ』というやつなんだから世の中面白いものだ。