名前を呼ぶのがこんなにも恥ずかしくて、緊張するのは相良さんにだけで…大好きなのに上手く呼べない。


相良さんの胸元にポスンッと顔を埋めて、背中に手を回してぎゅっと力を入れる。


職場では今日がお別れだと思うと様々な事柄が浮かんで来て、目尻に涙が浮かんで来る。


奈子ちゃんともお別れしなきゃいけないし、慣れ親しんだ受付嬢としての仕事も終わる。


相良さんにも職場では会えないし、当然だけれど…いつも気にかけてくれる秋葉さん達にも会えずに来年からは一人で新たな場所に向かわなければならない。


「…子供じゃないんだから、いちいち泣かない。一歩踏み出さなきゃ前に進めない事、和奏が一番知ってるでしょう?」


大体の検討がついている相良さんは根掘り葉掘り聞く訳ではないが、気持ちを察してくれているので慰めてくれる。


「………はい」


「ここで告白された時は本当に驚いたけど、内心は嬉しかったんだ。まさか和奏から声をかけられるとは思わなかったから…。職場では会えないし、新しい職場では初めは和奏も一人ぼっちで寂しいだろうけど…可能な範囲で送迎するから…泣くな」


「……はい。もう泣きません」


"よしよし"と頭を撫でられたが、名残惜しくて離れられない。