社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"

「…結婚するって後藤から聞いてた。自宅でピアノ教室とか、続けられる方法なんていくらでもある。末永くお幸せに」…と相良さんが麗紗さんに返事をすると「大貴、アイスコーヒーごちそうさま」と言って足早にこの場を去って行く。


去り際にも涙は滲んでいて、零れ落ちないように必死に耐えていると感じられた。


相良さんは麗紗さんが居なくなった椅子に座り、私の飲みかけのアイス抹茶ラテを飲み干し、カフェを出ようと誘導した。


「何で、飲みかけの抹茶ラテを飲んじゃうんですかっ!」


「…さっきのカフェに長居したくないから」


カフェを出て職場の駐車場までは少し離れて無言で歩き、いざ車に乗り込んでから文句をぶつけた。


平然と私の飲みかけの抹茶ラテを飲み干し、当たり前のように会計を済ませ、先にカフェを出てしまった彼。


「…麗紗さんって、やっぱり元カノだったんですね。隠さなくても良かったのに…」


シートベルトを締めながら、ボソボソと小さな声で愚痴を言った。


会社に来た時だって隠さずに言ってくれたら、ヤキモチは妬くかもしれないけれど…悩んだりしなくて済んだのに!


「だいたい、相良さんって隠し事が多いですよね!住んでる家もはぐらかして教えてくれないし、麗紗さんの事も教えてくれなかったし!…それに何より、相良さんは私の事を好きかどうかも分かりません!」


様々な思いが重なり、つい感情的になってしまい、思いの内をぶつけてしまった。


「相良さんの初恋の人だって麗紗さんに言われたけど、子供の時の感情が今だにあるだなんて信じられません」