僕と城矢君の平行線は。

時間はゆったりと過ぎていく。


保健室には長いカウンター上の大きく広い窓がある。

日当たりがよく、外の町並みもよく見える。

そこから見える青空が僕は好きだ。

青空には柔らかそうな雲がすぅーっと伸びていた。

ゆっくり、ゆったり、自由に形を変え自由に進む。

誰の目も気にしない、誰にも縛られないあの世界がいつも羨ましくて…。



僕は本に意識を戻した。

先生は眼鏡をかけ、仕事をしている。

僕はソファーに座り読書を再開した。

今ここには、ペンを走らせる音やページがめくれる音しかない。

時おり窓の隙間から風がやってきて、僕の髪にいたずらをする。

でも涼しいから窓は閉めない。


「最近のマコちゃん、少し変わったわね。」

先生が穏やかに言ってきた。

僕は突然のことに、少し驚く。

やっぱり変なのだろうか。

「ふふ。そんなに驚かなくていいわよ。」

「驚いてなんか…」

「ねぇ、マコちゃん。」

どこかいつもと違う。

真っ直ぐなその目には気持ちが籠っている。

でもどこか暖かい。

「あなたは非日常を味わって嫌だと思った?」

僕の心が少しざわめく。

「…。」

言葉が出ない。

嫌に決まってる。

僕は嫌われていて、ずっと1人でひとりで…。


「君じゃない、俺の名前は城矢翔。」


「俺は星南さんと友達になりたい。」


「いつか友達だって言ってもらうから。」


「どういたしまして。」


嫌なはずなのに。