先代の私 でも、、、

………静司兄、一体何故こんな状況を作ったんだ。



昨日のあの目を思い出すと、どうも緊張する。



「彩華、ですよね?」



呼び捨て。

昨日みたいにさん付けではない?



「はい」



人と話す時はその人の目を見て話せと言うが、

私は今、綾人に真っ直ぐ顔を向けてるものの視界には入れていない。



何故なら見れずに目を瞑った笑みを浮かべているから。



「……スミマセンでした」



「は?」

何故謝った?



「昨日、彩華に僕は酷い事を言いました。その上、敵意まで向けてしまい」



………っ。

「それは、私にこそ比がありました。確認もせずにあの女性を屋敷に入れたのがそもそも悪いのです」



「ですが僕は、彩華以外の女性の肩を抱きました。しかも、静夜以外が敵意を向けていました」



「仕方ないでしょう。咄嗟の判断は正しかったと思いますよ?」



「っ」



ん?

何だか雰囲気が変わった?



「彩華」



「何でしょう?」



………見ないと。



視線を感じる。

声音も祈る様な、そんな声音。



「彩華」



…見ないと。

名前を呼ばれているのだから、目を開けて。



「彩…華」



「ん?何だ、綾人」



高くしていた声音も、偽っていた雰囲気も、

目を瞑っていた瞳も止め、綾人を見る。



っ!?



驚いた。



何故って、

綾人がとても辛そうな顔をして、私を見つめていたのだから。



「彩…華」



っ。



あの時と、同じ顔。



眉を下げ、悲しそうなのに、

口角は上がって、無邪気に微笑んでいる。



嬉し泣き…の様な、そんな顔。