先代の私 でも、、、

女性は料理を並べ終えると一礼し、静かに襖を閉めて出て行った。



「じゃ、まぁ食べようか」



「そうだね」



裕人さんと静司兄の言葉で、並べられた料理に手をつける。



いや、つけようとした時、私も静司兄も裕人さんも手を止めた。



バイクの音が聞こえたんだ。

それも猛スピードで走っている。



すぐに止んだバイク音に違和感を覚えつつ、

この辺りにバイクなんて通るどだろうかと考えた時。



「来たかな」



静司兄が襖を見つめながら呟いた。



「来た?」



「ほら、裕人の息子だよ」



私の問い掛けに静司兄は答えたが、ここで思う。



「さっきから息子息子って、何故名を言わない?」



裕人さんも、息子やアイツ呼ばわり。

静司兄は息子さん、息子くん、裕人の息子呼ばわり。



「それは最後のお楽しみ!……みたいな?」



お楽しみねぇなんて思っていると、ドタドタと聞こえた足音。

廊下をスゴイ速さで走っている。



「慌ててる慌ててる」



「そりゃ遅れてるし当たり前だよ」



静司兄が楽しそうに嘲笑し、裕人さんが苦笑して答えたすぐ後。



襖1枚向こうに気配を感じる。



感じた事のある気配に、私はまさかと思う。 



先程までのドタドタと走っていた足音は聞こえず、シンとしている空間。



だが、その静けさとは裏腹に私の鼓動は早く大きくなっていた。



何故なら、私の感覚が正しければ今襖の向こうに居るのは……。



スッと音を発てて開いた襖。



私は目を瞑った作り笑いを顔に貼り付けつつ、襖から顔を反らした。