先代の私 でも、、、

「それもそうか」



作り笑いを辞めて素に戻ると、「うん、そっちの方が良い」と言われた。



無表情のどこが良いのかと思ったが、すぐに話を振られた。



「彩華ちゃんは、好きな人って居る?」



………見合いの場でよく言った。うん、よく言えたな裕人さんと思いながら答える。



「居る」



嘘偽りはなるべく無く。



「そっか。実はね、ウチの息子も好きな人が居るんだよ」



……ホントこの場でよく言えたな。

ま、そういう天然な所が裕人さんの魅力でもあるが。



それに気にしないが。



「何かねー、一目惚れだったんだって。一目で好きになった、

でも自分には釣り合わないとかブツブツブツブツ言っててさ」



「一目惚れ…か。………だったら何でこんな見合いを?」



「え?だってアイツ奥手で絶対相手逃しそうだから」



平然と答えたが、裕人さん。

言ってる事おかしえぞ?



「尚更何故」



逃しそうということは、まだチャンスがあると聞いて取れた。



なのに見合いなんかして……あっ。

「まさか、息子をその相手と結ばせる為にわざわざ私と見合いを?」



これで相手にヤキモチを妬かせる気か?



「違う違う!そんな事しないし、しようものなら静司を、風魔を敵に回すのと一緒だよ!」



何だ、違うのか。

だが余計に見合いの理由が分からなくなったぞ。



隣で携帯を直した静司兄。どうやら話は終わったらしい。



「でも、僕としても相手の子の良さが分かってるからね。彩華ちゃんには協力して欲しいよ」



「裕人、強制は許さないよ?」



あっ、呼び捨てになった。

しかも圧掛けてる。



「分かってるよ。心配しないで」



「どうだかね」



圧が効いてないのに内心に驚きを秘めていると、聞こえた足音。



「失礼します。お料理をお運び致しました」



襖越しに聞こえた女性の声に、静司兄が「どうぞ」と言った。



入って来た女性はカートに乗せた豪華で美味しそうな料理の数々を次々と、

尚かつそそくさと並べる。