毒牙。

薬、誘拐、リンチ、レイプなんかをする異端の族だ。

個々はどうか知らないが、とにかく人数が多いと聞く。



……厄介な所に拐われたな、朱里。



朱里とは、池沢朱里、16歳。

綺麗なサラサラの黒髪、大きなタレ気味の黒の瞳とそれに掛かる長い睫毛の可愛い美少女。

ドジで引っ込み思案だが優しい性格でお人好しでもある。



……はずだ。



正直な所、話した事など1度もなく見たことすら無いが、

同期が言うのだから間違い無しのはずだ。



「さっき連絡が来て、とにかく一緒に倉庫に来て!」



っ!



倉庫に………。



正直な話、行きたくない。



何故なら、考えないようにしてた案件は、

とてつもなく大きく桜花に関係するためなのだが、私情を挟んでる場合ではないか。



そう言い聞かせ、私は家業の服を出す。



「っ!」



静司兄が留守な為、正直家を空けたくは無いのだが、

こんなの私がさっさと潰した方が早いし、いずれ潰すなら今潰したいからな。



背に大きく家紋の丸に桜が刺繍された黒のブカブカなパーカーにハーフパンツ、

胸を潰すために晒しを着け、銀製の家紋の首飾りを付けて完成。



だが、目立つのを避けたい時等の為に一応上に着るパーカーも羽織っておく。



ちなみに、家業というのはもう分かったかも知れないが、

こういった異端の族や組等の組織を潰すこと。



警察から予めリストを渡されており、今回の毒牙もそれに入っていたのを覚えている。