「でも、朱里が居るからと告白もせずに身を引いて……」



幸せを願ってても、いざ前にすると嫉妬して逃げ出して。



「っ!」



あれ、何か涙が……。



目から溢れるように流れ出る涙を拭く事もせずに、

目の前で驚きを露にする綾人に言う。



「夢で泣かされるなんて、どれだけお前に惚れてるんだろうな、私は………」



諦めたつもりだった。

こんな想い、するとは思わなかった。



なのに、全然諦められてなどいなかった。



ースッ



綾人が私の涙を拭った。



「っ!」



綾人の顔を、表情を見て一瞬息を呑んだ。



何故なら、その表情はとてつもなく…綺麗だったから。



眉は下がり、とてつもなく悲しそうに涙を流している。

だがそれでも泣くのを堪えるような、そんな表情。



ーポタッ



綾人の瞳から流れ出た涙が頬に落ちた。



それと同時に、綾人が私の頬に手を添える。



「それは…、本当…です…か?」



夢にしてはリアル過ぎる。

現実にしては展開があり得なさすぎる。



「僕に、本当に惚れて…いるんですか?」



夢だと思っていたのに、夢か現実か定かで無くなってきた。



だがそれでも、夢であって欲しい。



そんな事を思いながら、目の前の綾人に言う。



「あ…ぁ。お前が好きだっ」



恥ずかしい言葉なのに、言えてスッキリしている。