「やはり、静夜なんですか」



「えっ」



喋った。

声音も口調も綾人そのもの。



だが、何故そんな悲しそうな顔をするんだ?してるんだ?



「貴女の中に、僕は居ないのですか?ほんの、1ミリも…」



夢にしてはリアル過ぎる。

現実にしては展開があり得なさすぎる。



………夢だな。



悲しそうな顔をする綾人。



「好きな女が居るのに、どうしてここに来た?」



静夜の言っていた、朱里に見向きもしなくなる程の女が居て。



そうすると綾人は驚きを露にしてから、必死な形相で言ってきた。



「好きな女は貴女の事です!彩華さん!」



「私が好き……か。……現実で、そうなら良いんだがな」



「………え」



間抜けな顔の綾人。



「フフフッ、本当にリアルだな。そんな顔、見たことなんて無いのに」

ースッ



「っ!」



綾人の頬を撫でる。

すべすべで静夜にも劣らないな。



そんな事を思いながら、手を離して目元に手を持ってくる。



「顔を見せる事もなく、会話すら数回程度…。それなのに、お前の事が好きになって」



呼び捨てにしてくれたからか身近な存在に感じて、

それからどうしてか綾人と一緒に居たいとか、カップル……なんて関係になりたいと思い始めた。