「お、ね、え、ちゃ、ん」



突然甘い声が聞こえた。



眠っていたらしく、

そのまま目を開けると静夜の顔が吐息が掛かるくらい至近距離にありそれは驚いた。



そんな私の顔に満足したのか、表情を緩めていつも通りになった静夜。



「フフっ、おはよ!」



「お、おはよ」



「お姉ちゃんお姉ちゃん、実は桜花6代目として、5代目のお姉ちゃんに用があって来たんだー」



静夜が顔を離すと、静夜の後ろに桜花6代目が驚いた様な顔をしていた。



………。



目を瞑り、深呼吸をする。



正直、6代目だけには会いたくなかった。



静夜は除外するが、私の、5代目総長魅桜の素顔も性別も、

知るのは桜花先代か5代目幹部のみだから、私の顔を見て驚いてるのだろう。



憧れていた存在が着物姿の女で、静夜の姉だということに。



いや、それは良い。



………本当は、この場から逃げ出したい。



考えないように、思い出さないようにして感情を今まで抑えてきたのに、

目を開ければすぐの距離に居るのだから。



手を伸ばせば届き、会話をしようと思えば出来る距離に。



………らしくない…私の、初恋…の…相手が………。



落ち着け、私。



桜花での先代は気軽に話し掛けれ、身近な存在だ。



いつも通りにし、素を見せれば良いんだ。



平常心を保ちながら、取り乱さずに、いつも通りのクールらしい私を。



私が目を開けると、6代目が私の前に横一列で整列しており、

頃合いを見てか総長の黒宮綾人が言った。



「6代目の問題を解決して頂き、ありがとうございます。それと同時に、巻き込んでしまって申し訳ありません」



そして、そう言うと6代目の静夜や朱里までもが頭を下げた。