はちみつ・lover

私は美香の言葉に耳を疑った。スマートフ

ォンに映し出されたネットニュースの記事

を凝視するとそこには紛れもなく私の住ん

でいるアパートが写っていた。

「ええ~っ!?マ、マズいよぉ~っ!!」

「とりあえずアパート行ってみよう?状況

確認しなきゃ」

美香は私を落ち着かせるように背中を撫で

る。荷物をまとめると美香に支えられなが

ら経理課を後にした。

「あっ、葵さん」

ロビーを出ると倉持くんが自動ドアの前に

立っていた。彼がにこやかに微笑んでいると

いうのに、私は頭の中がパニック状態で笑

顔を返す余裕がない。

「葵さん・・・どうしたんですか?そんな

悲しそうな顔して・・・」

彼の瞳が心配そうに揺れる。本当は彼と食

事に行きたかったのに、今はそれどころじ

ゃない。まずは自宅が最優先だ。

「・・・あのね、今・・・私の住んでるア

パートが火事で・・・状況見に行きたいか

ら、食事は・・・ムリになったの」

震える声を振り絞ってそう言うと、彼が頭を

ポンポンと撫でてきた。その瞳は強い意志

を映し出しているように思える。