深夜になり訪問者があった。

木田川さんとジャージさんとTシャツさん。あと事務所の社長さんだという50代くらいの女性。
スタイルがよくて深夜帯なのにきれいにメイクをしていていかにも私とは違う世界の人だと実感させられるような人だ。

「山崎と申します。今回はうちの者がお世話になります。・・・で、どうでしょうか?進藤は苦しがってませんか?」

その言い方にこの社長さんはライブの開催というより本当に進藤さんの体調を気にかけているみたいで少しホッとする。

「とにかく眠り続けているので食事どころか水分もとれていません。ですから点滴で何とか体内に水分を補給しています。まだ解熱もしていませんから辛いとは思うんですが、うなされたりはしていませんよ」

「そうですか。ありがとうございます。このところかなり無理をしていたようなので。何か必要なものがあれば言いつけて下さい」

「はい、今のところは大丈夫ですがまたお願いするかもしれません」

「水沢サンはご飯食べた~?」
ジャージさんから予想外の質問をされる。

「え?ああ、そういえばまだですね」
忙しくてそれどころじゃなかったからすっかり忘れていた。

「ダメだよー、木田川さん、その辺はちゃんとしてあげて」

「すみません、気が付かなくて」

謝る木田川さんの横でTシャツさんが部屋の電話機を上げルームサービスの手配をしてくれている。
素早い。

「ごめんなさいね、気が利かなくて」
社長さんにまで謝られては少々居心地が悪い。

「私も忘れていたくらいだし、子どもじゃないんですから自分で何とかすべきでした。お手数おかけしてすみません」
ペコっと頭を下げるとみんなに笑われた。
「いやいや、お願いしてるのはこっちだから」と。


ジャージさんはヒロトさん、Tシャツさんはユウキさんというらしい。

「さっきはヒロトが負債とか変なこと言ったけど、冗談だから。水沢サンは気にしないで頼むね」
「うん、冗談だから。明日タカトはかなり無理すると思う。だから、頼むね」

二人の言葉に私は深く頷いた。



それから社長さんとヒロトさんとユウキさんは寝ている進藤さんの寝室に入ることなく帰って行った。

本当に気持ちの良い人たちだと思った。
純粋に進藤さんのことを心配する気持ちが伝わってきた。
心から何とかして少しでも助けてあげたいと思う。