木下先生のラインはすぐに既読になり、必要な連絡が終わって雑談にと変わった。

『進藤さんって有名な人みたいだけど、水沢さん知ってた?』

『いえ、全然。そういえば、コンサートだかライブだかの出演者なんですよね?どんなジャンルの方なんですか?』

『木田川に聞いたら3人組ロックバンド「LARGO(ラルゴ)」のギタリストだって。うちの奥さんに言ったら大興奮してたよ。有名なんだろ?水沢さんは知らなかった?』

ええ!LARGOなの?
あのLARGOなの?
西隼人のドラマの主題歌もLARGOだし楽曲はよく知ってる。

『LARGOはもちろん知ってますよ。でも、あまりテレビには出てないからメンバーの顔までは知らなかったんです。そうなんですか。そんな有名人だったんですね。ライブを中止にできないって言った理由も理解できるかも』

『だからってわけじゃないけど、よろしく頼んだよ。クリニックの方は心配しなくていいから。ライブは明日の夜からだろ。何とか動けるようにしてやりたいな。何かあったら時間は気にしなくてもいいから連絡して』

『わかりました』

『初スイートルームが楽しめなくて残念だったね』

『全くですよ。将来の旦那様におねだりすることにします』

『ははっ。いい目標ができたみたいだね。じゃ、頼んだよ』

『はい、おやすみなさい』


スマホをポケットにしまって眠っている進藤さんを見た。

木下先生に言うのを忘れちゃったな。

この人とは初対面じゃありませんって。

・・・先日アツシさんのお店で会っている。この人、アツシさんと親し気に話していたあの妙に色気のある男性だ。

左目の下のほくろ

間違いない。

バーでちらっと見かけただけの女なんてこの人は覚えていないだろうけど。
LARGOのギタリストなんだ・・・。