隣からはくくっと小さな笑い声。
つながれたままの右手。
ビルの谷間に見え隠れするスーパームーン。
タクシーのラジオから流れてくるのはLARGOの新曲。
あの仕事部屋が無くなっても、私は十分に幸せを感じている。
あの部屋が幸せの象徴だと思っていたけど、今は彼と過ごす時間と場所すべてで幸せを感じているのだからこれからは場所にこだわる必要はない。
心の中がどんどん温かくなり窓を向いたまま頬を緩める。
「月がきれいに見える部屋を探してもらっていたんだ」
隣から私の大好きな声が聞こえる。
「ありがと、貴斗」
振り返りとびきりの笑顔で大好きな人を見つめると、彼は驚いたような表情をしたあとで、
優しく「月の姫と王様の部屋だからな」と笑った。
~Fin~