「社長から聞いたよ。あれからすぐに引っ越し先のリストから2軒に絞り込んでくれたって」

「はい、最終判断は清美さんにお任せしました」
「ありがとな」
進藤さんは嬉しそうに私の頭を撫でる。

私はその手の温かさが心地よくてくふんっと笑う。
「どういたしまして」

「今夜は新しい部屋に帰ろう」

私は耳を疑う。「え?」

「もう引っ越しは終わっている」

もう?
物件情報を見せられて清美さんの部屋に泊まったのか5日前。清美さんと相談しながら絞り込みをしたのが3日前。
それでもうすでに引っ越しまで終わってるとは。どれだけ手回しがいいんだ。

「今回の物件は事務所名義で社長が手配したんだ。でもまたすぐに引っ越しするから」

「すぐに引っ越しですか?」
どういうこと?

「そう。今回のは緊急避難的。あのままあそこにいたら怖がって果菜が来ないだろ?」
「え?ええ。まぁ、うーん」
そうですね。
当たっているだけに否定できない。