おまけに進藤さんはとても忙しく、2日から3日間地方で仕事をして1日だけ東京に戻り、また2日ほど出かけるというスケジュールになっている。少しでも東京に戻ってくるのはヒロトさんが奥さんの琴美さんに少しでも会えるようにとの事務所の配慮らしい。
琴美さんは切迫流産の危険はなくなり今は実家で過ごしていて、もう臨月に入っているし出産も近い。

私の方はあれからひとり胸のもやもやを抱えてどうにも自分にも進藤さんにも向き合えないでいた。


進藤さんが東京に戻って来ていても、仕事や体調を言い訳をして顔を合わせないようにしていて、そんな私の態度に進藤さんが気が付かないはずはない。

1週間程はほっといてくれたけれど、10日もすると焦れてきたらしく連絡が頻繁になり、それをかわしていたらとうとう今日は職場に突撃されて・・・こうして山崎社長のマンションに強制連行されてしまっったという次第だ。



「管理体制を一新するらしいけど、失った信頼は戻って来ないもの。とにかく鍵を替えたくらいじゃ安心できないでしょ。早く引っ越しましょう」
そう言って山崎社長はマンションの間取り図が付いたパンフレットを何部も私の目の前に並べ始めたというわけだ。

二人はセキュリティにこだわり何件かに絞り込んだらしい。