「でさ、そこで声をかけられたらさ。かけてきた男から見て君は魅力的だから声をかけたってことでしょ。
どう?それって女として自信が付かない?居酒屋のナンパでも合コンでもない、こんな上品なバーで声をかけられるんだから、相手だって誘う前に相手を見るよ。どんな女でもいいんならこの店で声はかけてこない。もっと気軽に行ける店にいくだろう」

「そんなものですか?」

「まあ、声をかけられるかけられないはどうでもいい。というかそれより、ここに一人で来るってことが大事だから」

「はあ」

「とりあえず通ってみて。ここにはアツシがいるから安全安心だし」

「それが自己肯定感ですか。ふうん。何か変わりますかね」

「変わるかもしれないし、変わらないかもしれない。でも、水沢さんって好きな男ができても何もしないでいるタイプでしょ。受け身ってよりも先に私じゃ無理って思っちゃう。それってなんで?自己肯定感が低いからじゃないの?そりゃ、むやみやたらに自信過剰な子も嫌だけど」

うーん。

「昨日も言ったけど、水沢さんはうちのナースの看板のひとりなんだからさ、もう少し自信もって。水沢さんってお世辞抜きにきれいだよね。明るく笑顔でいてよ」

「・・・がんばってみます」

周りを見渡す。
一人でここにか。ハードル高いぞ。
目の前に立っている笑顔のアツシさんと目が合った。

「水沢さん、アルコールは得意ですか?」

「沢山は飲めなくて。でも、飲むのは嫌いじゃありません。お酒の種類も名前もあまり知らないんですけど大丈夫ですかね?」

「大丈夫ですよ。とりあえず日替わりカクテルを頼むって手もあるし、おすすめで頼んでもらってもいいし。そこはご心配なく」
人懐っこい笑顔を見せるアツシさんにホッとする。

頑張ってみちゃう?