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「これって浮気ですか?」

私のひと言で進藤さんのジャケットを脱ぐ手が止まり、私を呆れたような目で見た。

「何の冗談だ?」

私は握っていいた手を広げて手の中のピンク色の石の付いたのついたピアスを見せた。




「学会で金沢に行くついでに実家に寄ってきます」
そう言って4日間この部屋には来ていなかった。

私の出掛ける前、進藤さんはいつも通りのように見えたんだけど。
あんなに公に恋人がいると宣言しておいて、この部屋に女性を入れるとはいったいどういう事なんだ。

「これはどなたの物なんでしょうか。進藤さんの返答次第では私にも考えがありますよ」
私はニッコリと微笑んだ。もちろん目は笑っていない。

「何だ、そのピアスは」

「何だって聞きたいのは私ですよ。なぜピアスがこの家に落ちていたんですか」

「知らん。どこにあった?」

「寝室ですよ。しかも、ベッド脇に」

途端に進藤さんの眉間にぎゅううっとしわが寄った。
いきなりリビングを出ると、寝室に入りバタンと音がしたと思ったら出てきて仕事部屋、バスルーム、クローゼット、キッチンと次々と家中の部屋に入り全部の扉も開けていた。

な、何?
どうしたの?
すごい勢いの進藤さんに驚いて私は固まりただ見守っていた。

「マンションのセキュリティと管理会社を呼ぶ。あと、警察もだな。事務所にも連絡しないと」
私のいるリビングに戻ってくると、さっさとスマホに手を伸ばす進藤さんの腕を私はつかんだ。

「待って。どういう事ですか?」

「どうもこうもないだろう。不法侵入以外に何があるんだ。ああ、果菜、何か盗られたものは物はないか?」

えええ。
不法侵入??
ど、泥棒?

「それより、果菜がそいつと鉢合わせにならなくてよかった。とりあえず、すぐに鍵を替えないと。それにここは引っ越ししないとだな」
進藤さんは至極真面目な顔で私を後ろ抱きにしてぎゅっと力を入れる。

「お前が無事でよかった」