それから山崎社長は早々に手を打ってくれた。

『イケメン俳優西隼人、女優秋野真紀と結婚』の発表がされたのだ。

秋野真紀は同じ事務所の看板女優。
30歳になったばかりで旬の実力派女優と、もはや説明の必要がないほどのイケメンスター俳優の西隼人。
密かに交際の噂はあったけど、今まで何の証拠もなく二人はスクープされたことはなかった。

その二人が交際宣言でなく、結婚発表だったのだから世間の度肝を抜いた。

あっという間にマンション前にいたマスコミはいなくなり、ワイドショーの話題もそればかり。
二人のことで世間は他のことを忘れたんじゃないかと思うほど私たちの周りは静かになった。

これは山崎社長の手腕だ。
二人のことは本来はもう少し後で発表する予定だったのに、西隼人の事務所に申し入れをして発表のタイミングを早めたらしい。

「いろんな人たちに迷惑かけちゃった?」
気になって進藤さんに尋ねた。
「いや、秋野真紀は早く発表したがってたし、西隼人も俺に協力したいって言ってたから問題ないよ。気にすんな」
「そっか。よかった」

ホントなら西隼人の結婚なんて大ショックな話なのに、それに救われるとは。
非常に微妙な気持ちになった。
進藤さんが何か言いたげにしていたことに気が付いていたけど、ここはスルーしてしまおう。

きっと私の考えたことに気が付いている。
天下のイケメンギタリストがまさかのやきもちとか。
ここでくすりとでも笑ったらとんでもないことになりそうだから、がまん、がまん。

一緒に暮らしていくうちに素の進藤さんのことがいろいろわかってきた。
とても純粋で素敵な人だ。