山崎社長の車が進藤さんのマンションの前を通過する。
車は敷地横の地下駐車場に入って行く。

「ああ、やっぱりいたわね」

マンションの出入り口付近の路上には何人もの若い人の姿が。
大きなカメラを持っているのはマスコミの人だろうが、女子高生らしき姿もある。
ここで進藤さんが出入りするのを待っているんだろうか。

「マンションの警備員が定期的にマスコミを追い払ってくれるんだけど、すぐにまた集まってきちゃうのよ。こうなると他の住民に迷惑がかかっちゃうからまた声明を出さなきゃいけないわね」

「あちこちに迷惑が掛かってしまうんですね」

「ま、そんな顔しなさんな。こんなの一時だけよ。そんなことより、そんな顔して帰ったらもう貴斗に部屋から出してもらえなくなるわよー。ああ見えて心配症だから」

私はくすっと笑った。
「はい、私も何だかそうかなとは思ってました」

「そーなのよー。あのオトコはねー。果菜ちゃんの迎えに行くって言ったら男のスタッフは木田川さん以外連れてくなとかうるさいのよ。特に未婚の男はダメとか。バカじゃないかしら。何の心配してんのよって話よ」

「ホントに何の心配でしょうね。この状態で」

私たちは顔を見合わせて笑った。

進藤さん、その心配全く必要ありません。
私はあなたしか見えませんから。