「お待たせしました」
私の声に顔を上げた進藤さんは笑顔で少し安心する。

「ありがとうございます」
木田川さんもにこりとして私からカップを受け取った。

「ああいい香りだ。本当にりんごですね」
「ええ。もし甘みが足りなかったらこのはちみつを足してくださいね」

にこりとすると若い男の子と視線が合った。
相手も笑顔を返してくれる。名前を聞こうと口を開きかけたところで「果菜」と進藤さんに呼ばれる。

「俺たちのことがもうネットニュースになってる」

ネットニュース?

「事務所のホームページを見たファンがもうあちこちでコメントしているんだろうな。今見た限りじゃ好意的なものが多いから果菜はあまり心配するな」
私の頭をポンポンとする。

「そうですね。もう心配しても仕方ない所にまで来ているんですもんね」
弱々しく笑うと
「果菜さんのアップルティー、貴斗が自慢するのがわかりました。本当に身体が温まって心もほぐれるようです」
と私の気弱さを打ち消すように力強い木田川さんの声がした。

「すごく美味しいです。アップルティーって初めて飲んだけど、こんなにうまいんですね」
若い男の子も私を励ますように言ってくれる。

「ありがとうございます」
今度は笑顔で返すことができた。皆さんに心配かけちゃいけない。