「果菜、飲み物持ってきて」
私の笑いに気が付いた進藤さんがぶすっとした顔をして顎をあげる。

「はいはい」
キッチンに向かおうとすると
「できれば果菜さん特製のアップルティーを私も飲んでみたいんですが。貴斗、いい?」
と木田川さんが私ではなく進藤さんに訊いてくる。
そこは普通私に訊くんじゃないのかな?

「え?何それ、木田川さん」
意外だという声を出した進藤さんだけど「ふーん」と言うと「果菜、作ってあげれば?」と私に柔らかい笑顔をむけた。

「水沢さん、これも持ってきました」
そう言って紙袋のひとつを手渡された。

「まあ」
それは袋いっぱいのりんご。
ふわんと甘い爽やかな香りが広がる。

うんと頷いて「少し時間がかかりますのでお待ちくださいね」と木田川さんと若い男の子に声をかけた。

私はキッチンに向かい、進藤さんたちはリビングのテーブルにパソコンを開いて何か話し始めていた。

りんごの薄切りをしながら、もしかしたら私をリビングから長い時間追い出すためにアップルティーをリクエストしたんじゃないかと気が付いた。
私に聞かれたくない話があるんだろう。

私はゆっくりとりんごを蒸らしてアップルティーを作りリビングに運んだ。
3人はやはり顔を突き合わせてパソコンを囲んでいた。