木田川さんは私より若いスーツ姿の男性と両手にたくさんの紙袋を抱えて進藤さんの部屋にやってきて、リビングで出迎えた私ににっこりと笑顔を見せた。

「やあ、水沢さん、久しぶり。この度はうちの貴斗のわがままを聞いてくれてありがとう。貴斗のことこれからよろしくお願いします」」

紙袋を置いて直角に近く頭を下げるから私は慌ててソファから立ち上がった。

「ふつつか者ですが、その、こちらこそよろしくお願いします」

ぺこぺこと頭を下げると隣で進藤さんがプッと吹き出す。「ヨメと舅かよ」

「あ、これ果菜さんの着替えや当面必要になりそうなものを持ってきました。どうぞ、お使いください」

「えっ、こんなにですか?」

この大量の紙袋の中身は私のためだったのかと驚く。
ライブの時に頂いた衣類は流行りの有名なブランドの物だった。
たぶんこれもまたそうなんだろう。

「水沢さんにはこの先もご迷惑をおかけすることになりますし、気にしないでお使いください」
にこにことしている木田川さんに何だか申し訳なくなる。

「迷惑をかけるのはどちらかというと私の方なんですけど・・・」

「いいえ、貴斗がスムーズに曲作りができているのも機嫌よく過ごせているのも全部水沢さんのおかげだと我々スタッフ一同わかっていますから。水沢さんには感謝しかありませんよ」

「おい、そういう余分なことを果菜に言わなくていいから」
進藤さんが苦笑すると、後ろで木田川さんと一緒に来た若い男の子もくすくす笑っている。

「話があるなら早くしてくれよ」
ぶっきらぼうに言ってソファにどすっと座った進藤さんは少し照れているらしい。
初めて見る彼のそんな姿に私もくすっと笑ってしまう。