ーーー春。
桜がきれいで、お花がたくさん咲く季節。
入学式の季節。出会いの季節。
そして、なにより風を感じてしまう季節。
「風が気持ちいい・・」
私ーー大東愛奈ーーは、自宅から少し離れた草原に来ていた。
ここは静かでのどかな牧場。東京ドーム五個分はあるそうだけど、どのくらいなんだろ?
それにしても、風が気持ちいい。私は風が大好きなんだ。
桜の花びらがそこらで元気に舞っていて、思わずほほが緩んでしまった。
でも、こんな静かで気持ちいい場所を独り占めできているのは、私の家がお金持ちだから。
私のパパは日本で代表的な不動産会社『大東グループ』の社長で、私は娘で令嬢。
だからこんな広い牧場も、風を感じるためだけに私のために用意されたところといっても過言ではない。
だから、私のせいでこの世界の中で牧場が足りなくて悲しい思いをしている人がいるんじゃないかって、少し思ってしまう。
「愛奈様」
自暴自棄のようにころころ草原を転がっていると、誰かから声をかけられた。
「・・あ、哲か」
この少し暖かい日でも、黒スーツをびっしり着こなしている重苦しいオーラのこの人は黒田哲。
私に仕えているいわゆる執事ってやつです。
それに哲はかなりイケメン。黒髪で、切れ長の目に鼻筋通った鼻、すらっとモデルみたいな身長とスタイル。年齢は確か、二十四歳。
こんなかっこよくて若いのに、執事だなんて少女漫画のようだなぁ。違うけど。
でも、クールすぎるのがマイナス。クールっていうか、冷たいのかな?
「その言い方、直してください。それより、そろそろ帰りますよ」
そしてふいっと背を向けた哲は、帰りの方向へと歩いて行った。
「おいてくぞ」とも言いたいのかな?
だけど、あんなふりして待っていてくれるところが優しいんだよね。
それにしても確かに、気づいたら夕焼けが見えてきた。
風を感じすぎてて、気付かなかった。
暗いところは嫌いだから、早く帰ろう!
「待ってよぉ、哲~!」
私は哲の背中を追いかけ、牧場を走った。
桜がきれいで、お花がたくさん咲く季節。
入学式の季節。出会いの季節。
そして、なにより風を感じてしまう季節。
「風が気持ちいい・・」
私ーー大東愛奈ーーは、自宅から少し離れた草原に来ていた。
ここは静かでのどかな牧場。東京ドーム五個分はあるそうだけど、どのくらいなんだろ?
それにしても、風が気持ちいい。私は風が大好きなんだ。
桜の花びらがそこらで元気に舞っていて、思わずほほが緩んでしまった。
でも、こんな静かで気持ちいい場所を独り占めできているのは、私の家がお金持ちだから。
私のパパは日本で代表的な不動産会社『大東グループ』の社長で、私は娘で令嬢。
だからこんな広い牧場も、風を感じるためだけに私のために用意されたところといっても過言ではない。
だから、私のせいでこの世界の中で牧場が足りなくて悲しい思いをしている人がいるんじゃないかって、少し思ってしまう。
「愛奈様」
自暴自棄のようにころころ草原を転がっていると、誰かから声をかけられた。
「・・あ、哲か」
この少し暖かい日でも、黒スーツをびっしり着こなしている重苦しいオーラのこの人は黒田哲。
私に仕えているいわゆる執事ってやつです。
それに哲はかなりイケメン。黒髪で、切れ長の目に鼻筋通った鼻、すらっとモデルみたいな身長とスタイル。年齢は確か、二十四歳。
こんなかっこよくて若いのに、執事だなんて少女漫画のようだなぁ。違うけど。
でも、クールすぎるのがマイナス。クールっていうか、冷たいのかな?
「その言い方、直してください。それより、そろそろ帰りますよ」
そしてふいっと背を向けた哲は、帰りの方向へと歩いて行った。
「おいてくぞ」とも言いたいのかな?
だけど、あんなふりして待っていてくれるところが優しいんだよね。
それにしても確かに、気づいたら夕焼けが見えてきた。
風を感じすぎてて、気付かなかった。
暗いところは嫌いだから、早く帰ろう!
「待ってよぉ、哲~!」
私は哲の背中を追いかけ、牧場を走った。