20代最後の夜は、あなたと

「おい、いまの聞いてたのか?」


「えっ、聞いてましたけど」


「俺は本気でおまえが好きだって、わかってんのか?」


「そんなこと、おっしゃってましたか?」


課長は、心底あきれたようなため息をつくと、私を優しく抱きしめた。


「死ぬまで、俺のそばにいろ」


自然の中で抱きしめられていると、非日常だからか、不思議とすんなり受け入れられた。


課長の、見た目以上にたくましい腕につつまれ、想像以上に厚い胸板に顔をうずめると、ずっとこのままでいたいっていう気持ちで満たされていった。


私は、いつのまにか、課長のことを好きになってたんだ。


自分でもわからないうちに、課長に惹かれていたんだ。


「返事は?」


課長は、私の耳元でささやいた。


「・・・はい」


「今から紗和は、俺の最優先の存在だからな」