20代最後の夜は、あなたと

「ごめん遅れて」


テーブル席がいっぱいだったのか、伊勢くんはカウンターの端に座っていた。


「また課長になんか言われたのか?」


「うん、帰ろうとしてたらちょっと、ね」


「あんま無理すんな、課長には言えない愚痴なら、俺が聞くから」


「伊勢くん、やっさしーい」


「からかうなよ」


ビールで乾杯し、最初は仕事の話をしていた。


現場に納品したら、色を変えたいと施主が言ってきたとか。


M社のグリル、あれいいよね、とか。


話が一段落して、少しの静寂のあと。


「伊勢くんとこうやって飲むことなんてないと思ってたよ」


誘われて、正直な感想を言った。


「俺は、もっと前から誘いたかったけど」


「え、そうだったの?」