20代最後の夜は、あなたと

年明け最初の出勤日だっていうのに、伊勢くんは部長とか霧島課長に呼ばれ、午後は会議室から出てこなかった。


今日くらいは残業しないで帰ろう、と終業時間すぎたらすぐに帰り支度をしてたら、


「宮本、ちょっといいか?」


霧島課長につかまった。


新年早々、ツイてないな。


「はい、わかりました」


ひきつってたかもしれないけど、笑顔で返事をした。


「失礼します」


会議室に入ると、課長と伊勢くんが座っていた。


「宮本は知ってるだろうけど、伊勢は3月いっぱいで退職することになった。


で、とりあえず伊勢が抱えてる案件は俺が引き継ぐから、宮本もサポート頼むな」


「はい、わかりました」


目が合った伊勢くんは、暗い顔してた。


えっ、なんかまずかった?


転職のこと、知らないふりした方が良かった?


自問自答しながら考えたけど、何も浮かばなかった。


「さっそく、今からアウトラインだけ決めるからな」


課長の仕切りで、伊勢くんが今やってる案件を整理したり、資料をまとめたりした。


伊勢くんは、素直に応じているように見えたけど。


3人の空気は、どこか重苦しくてどんよりしていた。