結局、週末は伊勢くんを無視し続けた。


土曜も日曜も直接、家に来てくれたし、電話やメールやありとあらゆる手段で私に連絡を取ろうとしてくれた。


スマホの電源も切り、部屋の電気もつけず、一歩も外に出なかった。


日曜の夜、インターホンが鳴ったから画面を見ると、霧島課長が立っていた。


なんで課長まで?


驚いて、エントランス解錠ボタンを押してしまった。


どうしよう。


課長が一歩一歩近づいてくる気配に慌ててしまい、スッピンで部屋着っていう自分の格好にも気づかなかった。


部屋のインターホンが鳴り、おそるおそるドアを細く開けた。


「生きてるか」


「はい」


「入るぞ」


「はい」


言われるがまま、ドアを開けた。


「無理すんなよ」


課長は私を、優しく抱きしめた。


不思議だ。


誰も受け入れたくない気持ちだったのに、すんなり課長の胸に顔をうずめた。


「伊勢とすれ違ったぞ。


アイツのこと、避けてんのか?」


「もう、無理かな、って」


「ちゃんと伊勢と話せ。


じゃないと、俺が紗和を奪えないだろ」


「何言ってるんですか」


思わず、笑ってしまった。


「おっ、笑ったな。


ちょっとは落ち着いたか?」


「はい」


「明日は出社しなくてもいいからな。


いろいろ買ってきたから、少しは食べろよ」


滞在時間は短かったけど、課長に救われた。