課長の胸の中は、いつだってあったかくて、まるで毛布に包まれたみたいに気持ち良かった。
ずっとこのままでいたい、って思わせてくれる。
「紗和」
やめて。
耳元でささやかれると、ゾクゾクする。
「課長、離してください」
「イヤだ」
「お願いします」
「紗和が伊勢とつきあうのかと思うと、イヤなんだよ」
「課長にはもう、関係ないことです。
それに、課長は他の支店に勤務されてた時から、たくさんの女性とつきあってたそうじゃないですか。
私は、そういう男性が苦手なので」
課長は黙って、腕をほどいた。
「残念だな。
他人の噂話は信じて、俺の話は信じられないってことかよ」
「そんな言い方しなくてもいいじゃないですか」
「どんな言い方したって、同じだろ」
課長は、冷たい目で私を見下ろしていた。
「短い間でしたが、ありがとうございました」
ドアに向かって歩き出しても、課長は追ってこなかった。
私も負けずに、一度も立ち止まらず、振り返らないまま廊下に出て、後ろ手でドアを閉めた。
ずっとこのままでいたい、って思わせてくれる。
「紗和」
やめて。
耳元でささやかれると、ゾクゾクする。
「課長、離してください」
「イヤだ」
「お願いします」
「紗和が伊勢とつきあうのかと思うと、イヤなんだよ」
「課長にはもう、関係ないことです。
それに、課長は他の支店に勤務されてた時から、たくさんの女性とつきあってたそうじゃないですか。
私は、そういう男性が苦手なので」
課長は黙って、腕をほどいた。
「残念だな。
他人の噂話は信じて、俺の話は信じられないってことかよ」
「そんな言い方しなくてもいいじゃないですか」
「どんな言い方したって、同じだろ」
課長は、冷たい目で私を見下ろしていた。
「短い間でしたが、ありがとうございました」
ドアに向かって歩き出しても、課長は追ってこなかった。
私も負けずに、一度も立ち止まらず、振り返らないまま廊下に出て、後ろ手でドアを閉めた。


