20代最後の夜は、あなたと

「宮本、お疲れ」


伊勢くんがビール瓶片手に隣へ来た。


「ありがと、伊勢くんに頼りっぱなしでほとんどできなくてごめんね」


「なに言ってんだよ、引き受けてくれて助かったよ」


お互いビールをつぎあい、乾杯した。


明日、何時にロビー集合?とか明日のことをひとしきり話したあと、


「これから、課長のとこ行くんだろ?」


伊勢くんは、小声で聞いてきた。


「あっ、うん」


「俺もついていきたいくらいだけど、耐える」


「耐える、って・・・オーバーだなあ」


「おまえのそんな姿、誰にも見せたくねーんだよ」


「えっ?」


「普段髪おろしてんのに、結んでるだろ?


浴衣だし、うなじのあたりがヤバいんだよ」


「ほんとにー、まだ私イケてる?」


「課長の前でも油断すんなよ」


席を離れる瞬間に、伊勢くんが私の右手に自分の左手を重ねた。