寡黙な御曹司は密かに溺愛している

「秋月さん、似合ってるわ」

早速、連れて行かれたのは、総合施設の中にあるプロモーションカフェの従業員控え室。

そこに置いてあるほわっとニャンの着ぐるみをニコニコと大宮さんに渡されて、渋々、着たはいいけれど視界不良もいいところ。
それにとても暑い。

着ぐるみの中のもわっとしたこの暑さは、もし真夏だと考えると地獄だと思う。

更にはお世辞でも嬉しくない大宮さんのこの言葉、喜べなさすぎる。


「……それ、どういう意味ですか?」


「まあまあ細かいことは気にしなーい。どう?着心地は?」


「……暑いですね、そして重い。視界不良でほとんど見えません」


「あはは。そうだよね。ごめんね、今日一日だけだから。あっ、私、ちょっとカフェの方見てくるからゆっくりしてて。すぐ迎えに来るから」

テンション高い大宮さんは、そう言って着ぐるみの私を一人残し、カフェに行ってしまった。