寡黙な御曹司は密かに溺愛している

「……必ず今日中に連絡します。わがまま言ってすみません」

三連休を控えた金曜日。
約束の二週間を待たずに仕事中も鳴り響いていた電話の相手は、おじいさん。

普段なら知らない番号からの電話は出ないのだけれど、あまりにも頻繁に掛かってくるからきっと知り合いからかもしれないと少しだけ席を外し休憩室でその番号にかけ直した。

何度目かのコール音の後、おじいさんがすまなそうに私に切り出してきた。


『春花か、すまない。仕事中に。実は、お見合いの話なんじゃが、先方からこの三連休でどうかと連絡がきたんじゃ。春花さえ良ければどうかなと思って連絡させてもらったんじゃ』


一週間すら経っていないというのにまさかの催促で少しムッとしたけれど、こんなモヤモヤと煮え切らない思いを抱いているのなら早まったほうが良かったのかもしれない。


でも、やっぱりもう一日だけ待ってほしい。
賭けてみたい。


今日、課長は出張で朝からいない。でも、直帰とは聞いてなかった。

もし、課長を待っていて会うことが出来たなら断ろう。
そして、会えなければお見合いを受けよう。