寡黙な御曹司は密かに溺愛している

「私には今付き合ってる人がいるわけじゃないし、それにお母さんだって本当は会ってほしいと思ってるんでしょ?」


「そ、それは……」


「自分がおじいさんの願いを叶えてあげることができなかったこと、ずっと悔やんでたんでしょ?」



お母さんはおじいさんの話を今まで敬遠していた。

それは、おじいさんを憎んでいたや嫌悪の気持ちからではなく、申し訳なさがあったからなんだろう。

それを今日この場の雰囲気でなんとなく理解した。


お父さんを選んだことを決して後悔はしていないはず。
お母さんからはお父さんを好きな気持ちちゃんと伝わってきたから。


「……春花には、かなわないわね。でも、お母さんの気持ちなんかより、大事にしてほしいのは春花の気持ちなの」


「うん、わかってる。だから即答はしない。考える時間をもらってもいいですか?おじいさん」


お母さんの慌てぶりにクスッと笑みがこぼれた。分かってる。お母さんが私の気持ちを重視してくれていることも、何も言わずに私に任せてくれているお父さんの気持ちも。