寡黙な御曹司は密かに溺愛している

核心を突く言葉を吐いたのは、苛立ちがあったから。おじいさんとはいえ、今日が初対面だ。

そんな人にいきなり友人の孫と会って結婚までしてほしいなんて懇願されても快諾なんてできない。

でも、無下に断ることも出来なかった。
弱々しそうに話すおじいさんを見て。


「わかってる。こんなこと頼むなんておかしいということも、断られることも。でも願ってしまったんだ。頼む、会うだけ会ってもらえないだろうか?……見合いしてほしいんじゃ」


虫のいい話。
自分から私たちを遠ざけておいて、疎遠にしたくせに。

ギュッと怒りを堪えるように唇を噛み締めた。


「……考えさせてください」


しばしの沈黙の後、悔しい思いを滲ませつつも私はそうおじいさんに返事をした。

その返事がおじいさんだけでなく、お母さんやお父さんにも意外だったみたいで、みんなが一斉に私の方に目をやった。


「……いいの?春花」


そう言ったのは、お母さんだった。
その問いかけに私は小さく二回頷いてこう返した。