寡黙な御曹司は密かに溺愛している

「……顔、あげてください。正直、今更そんなことを言われてもという気持ちしかないです。でも、それよりも私が聞きたいのはどうして今更になって、私に会いに来たんですか?」


自分でもびっくりするくらいに冷たい声。
普段の私とは違うことにお母さんやお父さんも戸惑っている。


「あ、あのね……」


お母さんが口を挟むのを止めたのはお父さん。でも、何かを言うのではなくおじいさんの言葉を待つように諭した。


「……こんなことを言うのは、本当に虫が良すぎると思っている。でも、年老いた今、どうしても思う気持ちがあって、すがる思いでここにやってきたんじゃ」


「……思う気持ちってなんですか?」


「そ、それは……」


おじいさんは小さく呟くように、淡々と話し始めたので、それに問いかけた。
おじいさんは少し言いにくそうに言葉を止めたけれど、覚悟を決めたのか口を開いた。


「……わしには、旧年の間柄の友人がいてな、実はお互いの子どもを結婚させたいという話までしていたんじゃ。でも……」


おじいさんはあえてお母さんやお父さんから目を逸らし、そう言った。
お母さんもお父さんも気まずい感じで、見るに耐えない光景に私は口を挟んだ。


「それでそれが無理だったから、今度は孫にってことですか?」