寡黙な御曹司は密かに溺愛している

『春香、あなたに会ってもらいたい人がいるんだけど……』

そう母親から連絡があり、週末、久しぶりに実家に帰ることにした。
実家に帰るのは久しぶり。

会わせたい人って誰だろう？
お母さんの手料理を食べられるの嬉しいな。なんて呑気なことしかその時は、考えていなかった。



そして、いざ迎えた週末。

ほくほくと家路に向かっていると、明らかに家の前にうちにはそぐわない黒い高級車が停まっている。

実家に帰ると、いつもは聞こえてくる二人の笑い声も聞こえては来ない。

でも、玄関の靴を見て、この持ち主が誰であろうかなんとなく想像がついたかもしれない。
どうやら久々の帰省は楽しめるものではないなと覚悟を決めてリビングへと向かった。


リビングへのドアを開けると、そこはとても異様な空間だった。


四人がけのダイニングテーブルにお母さん、お父さん。そしてその向かいに座るのは、とても貫禄があり、少し強面のメガネを掛けたご老人。